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歌うネズミと暮らす日々 [非労働日]

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 僕はその日、生活必需品の副作用でいつにも増してぼーっとしていて、しばらくの間、歌声自体に気が付かなかった。


 「ああ、なんか音楽が流れてる」とぼんやり気付くことができたのは、その曲がかつて自分が作った曲とそっくりだったからだった。


 (後から思うと、歌詞は完全に別物で、メロディーやコ-ド進行も細かい部分が違っていた。多分。)


 もしもそれがThe BeatlesだったりGorky's Zygotic MynciだったりYoussou N'Dourだったりしたら、もう少し気付くのが遅くなっていて、そうしたらおそらくその歌声は僕が気付くより先に消えていただろう。それ程にその歌声はその時の僕が認識している周囲の風景と一体化していた。フランチャイズの喫茶店で流れる無個性なJazzのように。


 (どうして人間はこのように無意味で蛇足的な比喩を好むのだろう。)


 「・・・あれ?なんで自分しか知らない曲とそっくりな曲が?」
そう思って歌声の聞こえる方を見ると、ネズミがいた。


 かなり可愛かった。


 そのまま一ヶ月が経過した。


 僕はその日、約25年振りに爽やかに目覚め、目覚めた瞬間には笑顔になっていた。


 なんて素晴らしいことだろう、生きている間に再びこんな目覚めを体験できるなんて。


 この日のこの目覚めを決して忘れぬよう、僕はPCを立ち上げ、WPS Writerを立ち上げ、以下の文章を打ち込んだ。


 僕はその日、サイレースの副作用でいつにも増してぼーっとしていて、しばらくの間、歌声自体に気が付かなかった。


 「ああ、なんか音楽が流れてる」とぼんやり気付くことができたのは、その曲がかつて自分が作った曲とそっくりだったからだった。


 (中村一義だったら知らぬ間に耳を塞いでいた。多分。)


 もしもそれがThe Velvet UndergroundだったりAphex TwinだったりCaustic Windowだったりしたら、もう少し気付くのが遅くなっていて、そうしたらおそらくその歌声は僕が気付くより先に消えていただろう。それ程にその歌声はその時の僕が認識している周囲の風景と一体化していた。フランチャイズの喫茶店で流れる無個性なJazzのように。


 (どうしてインテリはこのように無意味な比喩を好むのだろう。)


 「・・・あれ?なんで自分しか知らない曲とそっくりな曲が?」
そう思って歌声の聞こえる方を見ると、ネズミがいた。


 かなり可愛かった。


 そのまま二ヶ月が経過した。


 僕はその日、約二ヶ月振りに爽やかに目覚め、目覚めた瞬間には笑顔になっていた。


 なんて素晴らしいことだろう、生きている間に三度もこんな目覚めを体験できるなんて。


 この日のこの三度目の目覚めを決して忘れぬよう、僕はPCを立ち上げ、Word 2025を立ち上げ、以下の文章を打ち込んだ。


 僕はその日、依存気味のアルコールの副作用でいつにも増してぼーっとしていて、しばらくの間、歌声自体に気が付かなかった。


 「ああ、なんか音楽が流れてる」とぼんやり気付くことができたのは、その曲がかつて自分が作った曲とそっくりだったからだった。


 (星野源だったら間違いなくタヒねと呟いていた。間違いなく。)


 もしもそれがRichard D.JamesだったりMonkey D. LuffyだったりYoussou N'Dourだったりしたら、もう少し気付くのが遅くなっていて、そうしたらおそらくその歌声は僕が気付くより先に消えていただろう。それ程にその歌声はその時の僕が認識している周囲の風景と一体化していた。フランチャイズの喫茶店で流れる無個性なJazzのように。


 (どうして物書きもどきはこのように無意味な比喩を好むのだろう。)


 「・・・あれ?なんで自分しか知らない曲とそっくりな曲が?」
そう思って歌声の聞こえる方を見ると、ネズミがいた。


 かなり可愛かった。


 そのまま30年が経過した。


 完全なるオリジナル以外は全て剽窃と見做されるこの素晴らしきSF無し時代に至るまでにネズミは何度も代替わりをしていた。


 でもその日の僕はプロペシアの副作用でぼーっとしていて、しばらくの間、歌声自体に気が付かなかった。











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